協調編曲におけるコミュニケーション支援のための同期型楽譜エディタの試作
天野雅也

アブストラクト

作曲された楽曲をバンド形体で演奏するためや,より完成度が高い楽曲にする ために,編曲作業は行われる.特定の楽器に偏った知識を持つユーザが集まった バンドでは,各楽器パートの演奏者が自分のパートの編曲を担当し,組み合わせ ていく協調編曲が行われる.特定の楽器に偏った知識を持つユーザ同士の協調編 曲は,楽器知識をユーザ同士で補完し合うことで,個人ではできないような楽曲 を生み出すのに有用である.しかし,音楽には感覚的な要素が多いため,協調編 曲を行う際,曖昧な指示が多くなってしまい,ユーザ間の認識に齟齬が生じ,ユー ザ同士のコミュニケーションが難しい.そこで,本研究では,この問題を解決す るために,コミュニケーション支援機能を搭載した,同期型楽譜エディタの試作 を行った. 本システムはユーザ間でリアルタイムに共同編集できるように楽譜内のデータ を同期させる.これにより,作業箇所が目で見て把握できるため,編曲者間の指 示や,発言の指している部分の理解が容易になった.さらに,コミュニケーショ ンを支援するために次の 3 つの機能を搭載した.1 つ目は,楽譜エディタ上で対象 を指し示すためのポインティング機能,2 つ目は楽曲のイメージを共有するための 文書と音声を楽譜上に残すメモ機能,および 3 つ目は,以前の楽譜の状態と現在 の楽譜の状態を比較するために楽譜の状態の履歴を保存する機能である.ポイン ティング機能は,現在どこの部分の編曲作業を行っているかが,目で見て把握し やすくなり,ユーザの着目している箇所を簡単な指示語で他のユーザに共有する ことが可能とした.メモ機能は,曲全体の微調整,再考を行う際に他の編曲者の 意向が容易に確認できるようになった.また,実際に演奏した音声を録音し,シ ステム上で聞けるようにすることで,言語化しにくい感覚的な表現をユーザ間で 共有することができた.さらに,現在の楽譜の状態を保存できる機能を搭載する ことで,更新前と,更新後の状態を視覚的に比べることができるようになり,編 曲作業の支援に繋がると期待される. システムが持つ機能がコミュニケーションにどのような影響を与えるかの評価 実験を行い,本システムの有効性および今後の課題について考察を行った.本研 究で試作した同期型楽譜エディタを用いた協調編曲では,議論が活発化し,楽曲 への満足度も向上したことから,本システムは協調編曲において有効であるとい える.