情報の副次的な利用のための重畳Webブラウジングシステム
吉田圭佑

アブストラクト

本研究では,参照などの情報の副次的な利用のための重畳 Web ブラウジングシ ステムの実装した.資料作り,システム開発などに挙げられるデスクトップ環境 での作業は,一つのアプリケーションで行うより,むしろ複数のアプリケーショ ンで行うことが一般的である.例えば,システム開発では Web 上に公開されてい る API を Web ブラウザで参照しながら,テキストエディタにソースコードを記述 する.また,資料作りでは論文を表示する PDF ビューワーおよび画像表示アプリ ケーションを利用しながら,PowerPoint で編集作業するといったことが挙げられ る.これらの例のように,ある情報を参照しながら他のアプリケーションで作業 すること(以降,参照作業)は一般的に行われている.参照作業を行うためには, 各情報の視認性を確保するために,参照するウィンドウおよび作業するウィンドウ の管理が必要である.多くの場合,ウィンドウ管理は直感的な位置の指定ができる インターフェースであるマウスの操作によって行われる.しかし,ある作業を行っ ている時にウィンドウ管理をマウスで行うことは作業の中断につながる.このこ とから,作業の中断に繋がらないようなウィンドウ管理方法が求められる.特に, Web ブラウザは Web 上の知識を収集し,それらを作業に反映させるために,参照 作業において併用されることが多い.Web ブラウジングには,積極的に操作して 情報を集める「情報探索」と,集めた情報を他の作業に反映させるための「情報参 照」の二つの利用段階がある.本研究では,Web ブラウジングにおける「情報参 照」という副次的な利用の側面に着目し,参照作業を支援することを目的とした. 本研究では,参照情報の表示方法は半透明重畳によって表示(以降,半透明重 畳表示)する.半透明重畳表示は,参照情報を最善面,半透明およびクリックイ ベント透過で表示することができる.半透明重畳表示により,ユーザは半透明重 畳表示している参照情報およびその背後の作業情報のどちらも視認することがで きる.このことから,デスクトップ表示領域内で表示できる情報量の増加および 参照情報を作業箇所に近づけることによる視線移動距離の減少により,参照作業 を効率化できることが期待できる. 本研究では,半透明重畳表示による情報参照のための,参照したい情報(以降, 参照情報)の提示手法および管理手法を検討した.参照情報の提示手法は,半自 動表示位置決定手法およびフットインターフェースによる参照情報提示の操作手 法の二つの手法からなる.これらにより,キーボードやマウスなど,手で扱う主 要なインターフェースを利用しないことで,作業の手を止めることなく参照情報 の表示位置管理を可能にした.また,参照情報の管理手法は,透明 Web サムネイルおよび透明 Web クリッピングを利用することで行う.これらにより,一時保管 している Web ページの増加に伴う,復帰させたい Web ページの探索の負担を軽減 することで,情報の再利用を支援した. 本稿では,参照情報提示手法の中でも特に重要な,半自動表示位置決定手法に ついて評価実験を行った.評価内容は,半自動表示位置決定された参照情報表示 位置では,半透明重畳表示された参照情報内および作業情報内の文字がどの程度 読めるかおよびユーザが表示位置を決定する場合とどの程度近いかである.この 評価実験では,75%程度が半透明重畳表示された参照情報を読み取ることができ, 65%程度が半自動表示位置決定による表示位置が悪くないという回答を得た.ま た,評価実験では半自動表示位置決定において,文字が視認できること以外にも 考慮すべき点があることがわかった.